Child days memories
ここは山間のとある鄙びた村。
いくつもの峠を越えなければならず、外の町や村との交流もままならない。
そこに1人の少年がいた。彼の名前はリーブ。
機械を見たり、いじったりするのが好きだった。
「あんなもんがどうやって動いてるんやろ。」
そう考えると、いろいろな想像が広がっていく。
そして、それを確かめたくなるのだ。
しかし、村にある機械類と言えば、比較的貴重である。
家の時計を分解して、父親にどやされたこともあれば、村に何台かしかない電話を見に人の家に忍び込んで、泥棒に間違われたこともあった。
それだけ、好きだったのである。
リーブが12歳になった時、他の街へ向かう道筋にトンネルができ、行き来がぐっと便利になった。
外へ出ていく人も多かったが、いろいろな物が村に入ってきた。
リーブの好きな「機械」も、もちろん。
一番の大物は自動車だった。
自転車だの荷車だのはあったが、自分でこいだり、馬や牛が引っ張ったりしないでもいいなんて、リーブだけでなく、村中が驚いていた。
自動車自体の存在は以前から知っていたが、見たことがあるのは、山向こうの村や町に行ったことのある者だけなのである。
その自動車を手に入れたのは村長だった。
村長の家にはその自動車を見に、村中の人が入れ替わり立ち替わり、見物に集まってくる。
リーブも、もちろん見に行った。毎日、毎日。
みんなが見飽きて、集まらなくなっても、見に行っていた。
他の村人達は、自動車が動いているのや、運転しているのを物珍しそうに見ていたが、リーブが興味を感じているのは、もっと深い部分だった。
(ガソリンっていう燃料で動くって言ってたなぁ。ここから入れるみたいやけど、どうなってんやろなぁ。中も見させてくれへんかな。)
毎日、自動車のまわりをぐるぐると、飽きもせず見ながら巡っているリーブに気付いた村長は、ある日、彼に声をかけた。
「そんなに興味があるんやったら、一度、乗せてやろうか?」
「乗せてくれんでもいいから、仕組みを見せてくれませんか?」
少年は意気込んで頼み込む。
「お前はよっぽど機械類が好きなんやなぁ。しょうがない、少しだけやぞ。」
少年の熱意を感じたのか村長が呆気なく許してくれると、少年はボンネットを開けたり、運転席を見たりして喜んでいる。
「リーブ。都会には、村にはない機械がまだまだたくさんあるんや。」
腹這いになって、裏側を見るのに夢中になっている少年に村長がそう言うと、少年は村長を見上げて言った。
「ほんま?村長さん。」
「ああ、本当や。」
「ふ〜ん。行ってみたいなぁ。行けるかなぁ。」
「大人になったら、行ける機会もきっとあるさ。」
「そやな。大人になったら、うんといっぱい機械を見に行くんや。ボクは行くでぇ!!!」
少年は空を見上げて、大きな声でそう言ったのだった。