〜タークスの年始〜

神羅カンパニー本社ビル70F。

そこは社長室になっており、滅多な人間は入れない。

そして、社長ルーファウスが自室で休んでいるであろうこの時刻に、ここを訪れるものはいない。

そのはずなのに、何やら辺りを憚るような足音と、ひそひそ声が聞こえてくる。

 

「本当に大丈夫ですかぁ、先輩。」

「大丈夫だぞ、と。年越しパーティーだとかで遅かったから、社長が起きてるはずがないぞ、と。」

イリーナの心配発言に、レノが自信たっぷりに答えた。

そして、先に進んでいるルードに様子を聞く。

「ルード、どうだ?」

「・・・誰もいないようだ・・・」

「よし、行くぞ、と。」

 

そう、今日は1月1日。

年越しを会社で迎えるはめになったタークスの平3人組は、せめてもの腹いせに、一番良く初日の出が見えるであろう社長室に忍び込んだのである。

「でも、ツォンさんに見つかったら・・・・部屋で待機って言われてるじゃないですか。」

「今日は元旦なんだぞ。初日の出くらい見たって罰は当たらないぞ、と。」

「・・・・・2人とも、声が高い。」

ルードに言われて、あわてて口をふさぐ2人。

さて、東側の窓へと向かうと、空はもう既に薄い光が見え始めていた。

「・・・・間に合った。」

「初日の出を見ながら、一杯やるってのもよかったな、と。」

「先輩達、さっきも一杯やりながら年越ししてたじゃないですか〜!」

「・・・・・・」

「イリーナ、うるさいぞ、と」

「・・・・だから、2人ともうるさい。」

 

3人で、漫才をやっているうちに、太陽は顔を出していった。

「きれい〜。」

「・・・・・・たまにはいいな。」

「やっぱり、酒持ってくりゃよかったな、と。」

3人ともすっかり仕事のことも忘れて見ている。

「そう言えば、初日の出を拝んどくといいんじゃなかったか?」

不意に、レノが思い出したように言う。

「そうなんですか?」

「聞いたことがある。」

「・・・・・・」

「それじゃあ・・・・・今年こそ、ツォンさんと・・・・」

と、イリーナは祈り始める。

 

「あの鈍感男が気付くわけない、に1杯。」

「・・・・・・俺はイリーナが言えないに1杯だ。」

優しい先輩達は、賭を始めたのだった。

「先輩達〜、何やってるんですか、もう。」

イリーナが、気付いて怒りだした、すると突然、レノの携帯が鳴り出した。

「はい、レノです、と。」

『どこにいるんだ。部屋で待機していてくれと言っただろう。』

ツォンからだ。

「ちょっと野暮用です、と。」

『他の2人もいるのか?』

「はい。」

『早く戻ってくれ。任務だ。』

「分かりました、と」

レノは電話を切ると、もう一度太陽を見た。

「もしかして、ツォンさんですか?」

「・・・・・・仕事か?」

2人の質問には答えず、そのまま呟いた。

「今年も忙しそうだぞ、と。」


”小説の間”へ