〜なににこの末摘花に袖をふれけむ〜

 

その日は内裏で騎射の催しがあり、もちろん、源氏の君も出席していました。

その後の、源氏の君の宿直所からこのお話は始まります。

 

運動をして乱れた、源氏るーふぁうすの君の髪を整えているのは、女官の大輔の命婦いりーなさん。

最初は噂話など雑談をしてたのですが、源氏の君の注文があんまり細かいので切れかかっています。

「社長、じゃない、源氏の君、もうこのくらいでいいんじゃないですかぁ?」

「ダメだ、そこがまだ乱れている。」

鏡を見つつ細かい髪の乱れを指摘する源氏の君、さすが、いつもびしっと決めている方だけあります。

「もう大丈夫ですよ〜。そのくらい少し乱れてた方が、色っぽいですって。」

「ふむ、そうかな?」

また鏡を見て、検討を始める源氏るーの君。

この後、宴に出席するので念入りにおめかしです。

結構、自己顕示欲の強い方なので、美貌によりいっそう磨きをかけていかなければ気が済みません。

もうかれこれ、1時間以上やらされているイリーナさんはぐったり。

 

そこへ、イリーナさんの救世主がやってきました。

「失礼いたします、源氏の君。」

それは、執事のつぉんさん。

源氏るーの君邸の家政を見るだけでなく、秘書的なことまでやらされている大変な方です。

つぉんさんに憧れている、女官いりーなさんは、

(さ〜すが、つぉんさん。私の危機には駆け付けてくれるのね(はーと))

なんて勘違いも混じりながらも、ラブラブに加速が付いています。

「そろそろ、宴が始まるようですが。お急ぎになりませんと・・・・」

つぉんさんが言えば、いりーなさんは

(ああ、また私を助けるためにそんなことをっ)

なんて、また勘違いをしていましたが、彼は実に仕事に忠実な方なだけでした。

「そうか。それではもう支度をせねばな。ところでいりーな、さっきお前が言っていたさる宮家の姫君というのは、本当にいい女なんだろうな。」

つぉんさんの言葉で、ありがたいことに源氏るーの君の興味は、別方向へ行ったようです。

いりーなにとってはどちらにしろ、ありがたくないのかもしれませんが。

「噂で聞いただけです。私が見た訳じゃないですから、はっきりしたことはわかりませんよ!!」

行って、大ハズレだったらいじめられるのは私、とばかりにはっきりと言うイリーナさん。

「るーふぁうす様・・・・またですか・・・・?」

つぉんさん呆れてます。

「ふっ、今度こそ私の妻に相応しい、理想の女性が私を待っているはずだっ。」

実は源氏の君、性懲りもなく、理想の妻を求めていらっしゃいます。

自分に自信がある上に、理想が高いですから・・・・・結果は目に見えてますでしょ?

「そうですか・・・・・。」

つぉんさん、諦めたようです。

「それで、あの2人に調査をさせるんですね、いつもの様に。」

「そうだ。こちらへ呼んできてくれ。」

「わかりました。では、お支度をお願いします。いりーな、頼んだぞ。」

「はいっ、つぉんさん。」

執事つぉんさんは部屋を出て行き、ラブラブいりーなは「つぉんに命じられた仕事」源氏の君の支度を、嬉しそうに手伝い始めました。

 

さて、源氏るーふぁうすの君のお支度も終わり、女官いりーなさんが辺りを片づけていると、執事つぉんさんは源氏の君の従者の2人を連れてきました。

「お待たせいたしました。」

「来たな。早速だが、今回はさる宮家の姫君について調べて、段取りを付けて欲しい。」

源氏るーの君がそう言い放ちます。

すると、連れてこられた2人も、明らかに「またか」という顔をしています。

「源氏の君は、『懲りる』という言葉を知らないのかな、と。」

「・・・・・・・知らんだろう」

思わず2人、れの惟光と、るーど良清は小声で言葉を交わします。

いつもご本人の思いこみで段取りを付けさせられては、「あそこが気にいらん」「あんな女が私の妻として相応しいと思うのか」なーんて、ケチつけられているお2人様としては「またか・・・」と思うのも無理ありません。

「何か文句でもあるのか?2人とも。」

流石に、彼らの顔付きに気付いた源氏の君の声は、怒りを帯びています。

「い、いや、何でもありません、と。」

「・・・・・・・・・(汗)」

「それでは、早く行け。」

そう命じると、源氏の君は宴へと向かいました。

「まぁ、今回も何な任務だが・・・・頼んだぞ。」

つぉんさんもそう言うと、源氏の君の後を追います。

いりーなは、とばっちりを食わないようにと、つぉんに付いてコソッと出ていきました。

「ふぅ、毎度人使いの荒いお人だぞ、と。」

「・・・・・・・・・」

「タークスがこんな調査までするとは知らなかったぞっ、と。」

「・・・・・・・調査は調査だが。」

「仕方ない。命じられたら、やらなければならないな。」

「・・・・・・・仕事だ。」

さすがプロのお2人。気が進まないながらも、キチッとお仕事に出かけました。

 

「あそこの邸は主の宮が亡くなってから、姫君が少ない女房達と住んでいるようです、と。周りの噂だと美人の姫君だそうですが。まぁ、これは賭だな、と。」

「・・・・・・・こまごまと何か作ったりすることが好きな方だそうです。」

「ああ、もちろん、屋敷内の位置関係なんかはしっかり頭に入れてきました、と。」

「・・・・・・・女房を買収してあります。」

明くる日の夕方、2人は源氏の君に報告しています。

「そうか、裁縫などが好きな、家庭的な姫なのだな。よしっ、今夜行こう。車の用意を。」

相変わらず都合の良い解釈です。

「今から行くんですか、と。」

「ああ。何だ、何か文句でもあるのか?」

「(・・・はぁ〜)いえ、ありません。」

れの惟光さん、どこかの女性と約束でもあったようですね。

そこへ、常識派のつぉんさんがたしなめます。

「るーふぁうす様、女性のところへいきなり行かれるというのはどうでしょう。やっぱりここは、文を交わしてからになさったら・・・」

「私が行って、断る女が居るはずがない。善は急げと言うじゃないか。」

「相手にも予定というものが・・・・」

「私以上の優先事項はない。」

「・・・・・・・・・」

どこまでも強気の源氏るーふぁうすの君。

つぉんさんに説得できないとなれば、他の誰にも説得なんて出来ません。渋々牛車の用意をし、一行は出発しました。

 

「ここか?なるほど、荒れ果てた寂しげな邸だな。」

物見窓から外を見た源氏の君は、想像できなかったほどの荒れように驚いていました。

「こんなところに女性が独りで住んでいるとは、さぞかし寂しいだろうな。それでこそ、口説く甲斐があるというものだ。フッ。」

「只今、例の女房に話を付けに行っています。もうしばらくお待ち下さい。」

「ああ。この月の光がまた、荒れ屋に差し込んで・・・・美女との語らい。そして・・・・フッ。」

なんだ、るーふぁうすさんも結構、妄想が激しいんですね。(私とはお友達になってもらえそう?)

そうこう言っている間に、話を付けに行っていたお2人が戻ってきました。

「なんとかなったぞ、と。」

「・・・・・・・段取りはつきました。」

「ご苦労。では行こうか。」

源氏るーの君は車から降り、草が身の丈ほどに生い茂り荒れ果てた庭を、れの惟光さんの案内で姫君の部屋の方へと分け入っていきました。

執事つぉんとるーど良清が、後に続きます。

そのうちに、手燭を持った女が1人見えてきました。

「よう、大丈夫かな、と。」

「大丈夫、姫君だって源氏の君に憧れていらっしゃるんだし。」

「お前か?案内をしてくれるのは。」

突然、源氏の君に問われて、この女房はハッとして、

「はいっ、こちらにお仕えしています女房のじぇしーです。」

と、思わず直立不動です。

「こちらへどうぞ。」

源氏の君を案内してから、ほぅっと溜息をもらし、

「あんな綺麗な人もいるのねぇ。何だかときめいてきちゃったわ。私ってば、う・か・つ。でも、研究費があんまり無いからこんな事引き受けちゃったけど、姫君には喜んでもらえそうねぇ。あんなに綺麗で若いパトロンが出来るんだもの。」

何て言ってます。(ニヤッ)

「パトロン?」

じぇしーの言葉を耳にしたレノ惟光さん、何だか嫌な予感がします。

「そう、姫君はいろんな研究をなさっているの。まあ、主に武器なんだけど・・・」

 

ウギャアー!!!!!!!

 

辺りに、恥も外聞もないような叫び声が響きわたります。

もちろんお判りかと思いますが、源氏の君の声です。

急いで、皆が駆け付けると、そこには、かなり年のいった女性にしがみつかれた源氏るーふぁうすの君が腰を抜かしていらっしゃいました。

「キャハハハハハ!どうなさったの源氏の君。私、あなたみたいな方、タ・イ・プよ。どうにでもして〜。キャハハハハハ!」

「源氏の君、すかーれっと姫もこう言っていらっしゃることだし、ご夫婦になってたくさん研究させて差し上げて下さい。」

じぇしーさんが口添えしますが、源氏の君は固まったままでした。

「あ〜あ、言わんこっちゃ無いぞ、と。」

「・・・・・・・後が恐ろしいな。」

「これで学んで下さるだろうか?」

『はぁ〜』

3人3様の溜息でありました。苦労はこれからですね、お三方。


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