memory
『お母さん・・・お父さん・・・。・・・何処・・・?』
光の向こうに二つの人影。人影は振り返るが、光が逆光になっていて顔が見えない。
『私は・・・此処にいるよ・・・?ねぇ・・・』
手を伸ばす。だが、奥の光が更に強くなる。思わず伸ばしていた手を縮めて光を遮る。
『待って・・・。私を・・・置いていかない・・・で・・・。』
チュン・・・チュン・・・。
雀の鳴く声が響く。それとともに朝日の光が少女の顔を照らす。それに導かれるように少女は目覚めた。
「・・・・・夢・・・・。」
少女・名をティナ・・・。
ティナは、全てが終わったあとモブリズに戻ってきていた。
ケフカを倒した後、世界は生気を取り戻した。木々は徐々に緑を取り戻し
大地は力を取り戻していった。花は種から芽を出し鳥は木々にとまり歌を歌う・・・。
崩壊前の平和な日々を取り戻しつつあった。
それと同じように、モブリズも次第に明るくなってきた。どこか、寂しそうだった子供達も木々が明るくなってきたと同時に笑みが絶えなくなってきた。そんなある日のこと・・・。
「うぇーーん・・・。」
1人の女の子が泣き出してしまった。ティナは、突然のことに驚き駆けつける。
「どうしたの?」
「う・・・うぅ・・・。ママぁ・・・。」
突然今まで言わなかったことを言い出したので戸惑う。
「ママ?ママは、ここにいるよ?どうしたの?怖い夢でも見たの?」
「違う・・・の・・・。本当のママが・・・死んじゃうの・・・。」
ティナは、不思議と胸が痛んだ。
「そう・・・ね・・・。でも、私はここにいるでしょ?大丈夫だよ・・・。みんな、ここにいるからね・・・。」
「う・・・うぅ・・・。」
頷くがまだ泣きやみそうにない。近くを通りかかったカタリーナが不思議そうに訪ねる。
「どうしたの?ティナ・・・?」
「あ・・・、カタリーナ・・・。」
心配そうにティナに訪ねる。
「大丈夫・・・?ティナ、顔色があんまりよく無いみたいだけど・・・。」
「そう・・・?悪いけど、この子良いかな?」
「ええ。風にでも、当たってきたら?」
「そう・・・するわ・・・。」
外の方に歩いていく。具合が悪いわけではないのだが、何故か少し寒かった。外に行くとディーンと数人の男の子達が花を摘んでいた。
「ディーン?なにしているの?」
「・・・母さん達の墓に添えようと思ってね。」
「ティナママ!あのね、僕たち前におかーさんにね、花輪の作り方教えてもらったんだよっ!」
花輪というのは、名前からして分かるように花を色々組み合わせて出来る輪だ。
「お母さんに・・・?」
「うんっ!だから、・・・」
「今日、この子のお母さんの誕生日なんだよ。だから・・・」
ティナは、そっと微笑みその子をなでた。
「私、ちょっと出かけてくるから・・・。ディーン、あとはよろしくね。」
「あっ、うん。」
ティナは、不思議と寂しい気持ちになった。それが何故だか・・・ティナには分かっていた。それは、「母親」との思い出のなさだった。夢のせいかも知れないが、母親との思い出・・・。それがティナには全くない。
生まれてすぐ、母親と引き離され人工的に育てられ魔導の力のみを愛され誰1人として愛される事がなかった幼き頃・・・。その事を思うと胸が押しつぶされるかのようだった。
(・・・普通の子供になら・・・お母さんとの思い出があるのよね・・・。でも・・・わたしには・・・。)
気がつけば、ティナはフィガロに来ていた。
フィガロでは、エドガーが王位についているので何ら不自由なく前と同じように過ごしていた。ただ前と違うところと言えば、マッシュがいることだろう。
出入り口の門を開くと見慣れた光景が広がる。少し歩き、最初に出迎えてくれたのは・・・。
「ティナっ!」
「マッシュ!・・・久しぶりだね。」
「どうしたんだ?珍しいなぁ。」
そんな、陽気な性格を見ていると自然と心が安らいだ。そのせいだろうか・・・涙が不思議と溢れた・・・。
「・・・あれ?」
「ティ、ティナッ?!どうした?!一体・・・」
ティナ自身にも分からない。自分にも理解不能な感情が胸に溢れる。涙を拭いて必死に喋ろうとする。
「あの・・・ごめん・・・。こ、こんなに泣いちゃ・・・て・・・。迷惑だよね・・・。」
マッシュはまだ動揺しているが、その言葉に応えようとする。
「あ、そんなの別に良いけど・・・さ。一体、どうしたんだ・・・?」
心配してくれている・・・。そんな久しぶりに感じる仲間の心強さに惹かれ理由を話し始める。
マッシュは、ただ聞いていた。慰めることもできない。ただ心配し、少女の辛さを分かろうとするだけだった。全て聞き終わったあと、マッシュは場所を移そうといって誰もいないような所へ移動した。
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「落ち着いた・・・?」
無き終わって落ち着いたのを見計らい一言語りかける。
「・・・うん。ごめんね・・・・。」
マッシュは首を横に振るいどこかを見つめるように語り出す。
「おふくろか・・・。俺もあんまり覚えてないんだよな・・・。」
「・・・え?」
ティナは意外な言葉を聞いたので聞き返す。
「俺がすっごい小さい頃死んじまったから・・・。」
「マッシュ・・・も?」
「ああ・・・。でも、俺には兄貴もいたし親父もいたから・・・寂しくはなかったけどね。」
そう言いながら言う笑みは、言葉とは裏腹に少し寂しそうだった。
「でも、確かに時たま寂しくなるときとかあるよ。でも、それでも支えてくれていたのは、やっぱり・・・。」
「?」
「・・・・・やっぱり、仲間がいたからじゃないかなぁ。」
マッシュは少し照れながら言った。ティナは少しそれがおかしく、静かに笑う。
「どんなつらくても、仲間が支えてくれていたし、思い出が足りなくて寂しくなるときは仲間との思い出で補えた。そんな風に人には常に・・・支えてくれたり補ってくれたりしてくれる人がいるんじゃないのかな・・・。」
そんな風に自分を慰めてくれる。それさえもティナには嬉しく思えた。そして、なに
よりその言葉がティナの心を温かく包み込んだ。
「・・・そう・・・だよね。私はもう・・・1人じゃなかったんだ・・・。」
「えっ?なんか言った?」
ティナは、首を横に振る。その時の笑みには、先程までの寂しそうな笑みはなく明るい、前向きな笑みが広がっている。
「ありがとう、マッシュ。おかげで大切なことを忘れずにすんだわ。」
「大切なこと?なんだ、それ・・・?」
「ひーみーつ。」
ペロッと、少し舌を出して茶化す。
「なんだよ、それ。大切な事ってなんだよ・・・?」
「秘密だってば。あっ、エドガー。」
「やぁ、ティナ。久しぶりだね。」
マッシュの姿を確認すると後ろを向いて去ろうとする。
「・・・お邪魔だったかな?お二人さん?」
ティナが驚いて、必死に弁解する。
「ち、ちちちちち違うよ!!」
マッシュは少し傷つく。(笑)
「本当かい?それなら良いんだけどね。」
エドガーはまだからかっている。それを誤魔化そうとマッシュが提案する。
「な、ティナ。ロック達の所にでも行こうか?久しぶりに。」
「本当?行く行く!」
「俺も行って良いんですか?お二人さん。」
全く挫ける様子なく再び攻撃を開始するエドガー。
「兄貴・・・。いい加減その言い方やめろ・・・」
そんな二人の小さな兄弟喧嘩を見てティナは思わず大笑い。
ティナは思った。
自分には、確かに母親の思い出はない。でも、そのかわり掛け替えのない大切な思い出がある。自分を思ってくれるひと達・・・仲間との思い出・・・。母親と同等・・・いや、それ以上の思い出を手に入れられた。ティナは、これからもこの思い出を胸に一歩ずつ歩き続けられるだろう。どんなにつらいことがあっても、どんなに悲しいことがあっても・・・。
仲間がいる限り・・・自分を思ってくれる人がいる限り・・・。
*** f i n ***